不動産と相続税 11/24

芸能人の法人による無申告のニュースが話題になり久しいですが、不動産業界にも税金に関するトピックが持ち上がりました。

日経新聞が11/18付けで掲載した以下の記事です。

相続税で「路線価」を否定 地裁判決、”節税”に警鐘
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52324200Y9A111C1CR8000/

記事自体は会員記事ですので詳細は日経読者でないと読めないかもしれません。
簡単に記事内容をご紹介すると、

今年の8月末、東京地裁のの判決で路線価に基づく相続財産の評価を「不適切」としたことについて言及されています。
この裁判は相続人と国税の裁判で、争点になっているのは相続された不動産の評価方法です。

因みに相続人の主張による計算方式では評価が3億ほど、国税の主張では12億強ですから、かなり、かい離しています。
相続税の最高税率は55%ですので、計算しなくとも大変な負担の差が発生するのがお分かり頂けると思います。

従来、不動産の相続評価は「路線価」という国税が毎年発表する土地の価格をもとに行われてきました。路線価とは何でしょう。
この点が不動産の難しいところで、不動産の評価は一物四価などと呼ばれ、一つの不動産に様々な「価格」がつきます。

・実際に取引される際の取引価格(都度、取引者が決定)
・公示地価(毎年、国土交通省が発表)
・固定資産税の計算に使う固定資産税評価額(3年に1度、市区町村が発表)
・今回の争点の不動産評価額(路線価)となります。(国税が決定)

もちろん、これら四つの価格はそれぞれが関連しあっていますので、ばらばらに四つの価格が値付けされる訳ではありませんが、一般的には分かりにくい仕組みと言えるでしょう。


不動産の話からは少しそれますが、相続時の資産の評価というのは基本的には時価で行いますので資産に対して割引がかかることはありません。
現金や上場株式はその評価が簡単で、時価がいくら、というのはイメージがしやすいと思います。

それに対して不動産の時価は、「いくら」と決めるのが難しい面があります。売りに出してみて、その価格なら買う、となって初めてその価格が時価とい言えるのです。


ですから不動産の相続税時の評価は、路線価をもとに評価し、(または倍率方式で評価)納税するというのが原則でした。
そして、この路線価は取引価格の80%程度となるようになっているようです。
これは価格変動を考慮した処遇です。

ここで問題になるのが、相続人は従来通りに国税が決定している路線価をもとに計算し、時価評価を行い、納税額を計算したということです。

日本は基本的に申告納税の仕組みですから、自分で評価し計算し納税するわけですが、むちゃくちゃな計算をした訳ではなく、路線価をもとに適正に計算したというのが今回のケースがややこしいポイントです。

では、なぜ原告は正しい方法で申告したのに、国税は自ら発表している計算方法を自ら否定して争っているのでしょうか。
それは記事中にも詳しくありますが、今回の事案を「過度な相続対策」と見ているからでしょう。

相続対策とか相続税対策というのは昔から様々な方法が取られてきました。
不動産だけでなく株式や保険を使った方法もありますが、不動産を活用した対策は割とポピュラーと言えるでしょう。

今回は国税の主張では取引価格と路線価が大きくかい離している点と、被相続人が不動産を購入してから2~3年で、死亡により相続が発生しているという点を取り上げ、過度な相続対策と認定しているように見えてしまいます。もちろんこの点以外にも材料はあって、総合的に見て過度な相続対策と主張しているとは思いますが。

もちろん過度な相続対策が良いとは言えません。
しかし、今回のようなケースが「過度な」対策だとするならば、どこからが過度な対策で、どこまでは適正なのか、このガイドラインがないことには、国税のさじ加減で課税されてしまいます。

納税が国民の義務なのはもちろん、ルールの中で節税に励むのもまた国民の権利です。
この辺りに関しては一国民としてガイドラインの提示を明らかにして欲しいと願うばかりです。

裁判の行方は大変気になりますが、今回の件で心中穏やかでない方々はこのような相続対策スキームを前面に押し出して営業している不動産関係者とコンサル系の方々だと思います。
あれもこれも否認されたのでは、話が違うと損害賠償になってしまいます。

皆さまにとっても不動産に関わる税務は非常に身近なものであると同時に、非常に難解なものです。不動産に関わる税務はぜひ、税理士等の専門家に頼ることをお勧めするとともに、過度な「節税」というワードを使ったセールストークにはご注意頂きたいと思います。

さて、最後に。
今回のケースでは不動産に関わる税務というよりも、相続に関わる税務についてお話ししてきました。
そもそも上記のケースの相続税の評価額が大きいため、現実味がないと、どこか他人事になってしまいますが、そんなことはありません。

相続税は、2015年から基礎控除が引き下げられ、実質増税といいますか、対象者は格段に増えています。
相続が発生しても課税の対象は1~2%程度と昔は言われていましたが、2017年の相続では、全体の8.3%が課税対象と、他人事ではなくなってきています。

もちろん過度な相続対策は今回の例を見ても控えるべきですが、暦年贈与などの基本的な方法により適正に準備することは可能です。
まずは相続税なんて他人事と決めつけず、事前の準備をしておくことは大切になってくると思います。


※個別具体的な税務の相談は税理士等の専門家にお尋ね下さい。
 本コラムは直近の事案をもとに税務の一般的な解説をするものです。